ぅドヒョン、ドヒョン、ドヒョン−−−圧縮が高いからここで3秒ほど止まるが、スタータボタンから指を離してはいけない...
ドドッ(来たぁっ!)、
ドドドドド
ガァオガァオガーオォドドドドドドドドドドド
駐車場いっぱいに咆哮がこだまし、さらには「ガァオ」に合わせて「ヒュルルルル、ヒュルルルル」とFCRレーシングキャブレタK&N毒キノコ仕様の吸気音に、カカカカカカカカカカカカカカカカカ(精度が悪い上にオープンカバーの乾式クラッチ ノイズ)...
まさに騒音の大合唱状態の中、「ヨウ、今日も調子良さそうだな...」と不敵な笑みを投げかける。
地下にある駐車場から地上界への無骨なケージ式のエレベータ。重々しく上に開いて行く金属製のシャッターがなんとも気分をそそる。サンダーバードかナイトライダーさながらである。
"Thunderbirds are GO !"の無線の指示に後押しされ、勢い良く1992年ボローニャ生まれの赤い弾丸が夕暮れの街に飛び出して行く。仕事は珍しくまだ薄明るい時間に片付き、
「これからならまだ間に合うナ...」。
先月のレースで壊れてしまったレースマシンの修理。この時間からじゃ大した事は出来ないが、少しでも作業が進めば落着こうってモンだ。何せ練習までは週末があと1回しか無い。
帰路を急ぐ車でごった返すR1旧道を、車の合間を縫いながら疾走し、下り坂を降り切った左コーナーで横Gで外側に押し流されようとするクルマのイン側にフルバンクでカットイン!素早く2速シフトダウンしながら向きを変え、前を行くトラック2台の間目掛けてワイド オープン
スロットル...と思ったところで、
「あれ?なんかパワー無いな??? 」
と同時にリアタイヤが軽く外にスライドする...
「変だな」と思いつつも気を取り直して体勢を立て直し、次の高速右コーナーへ向かう。
全開で攻められるんだけど、この時間だと周りのクルマがびっくりしちゃって却って危ない目に遭うから、ここは大人で、次の信号の一番前辺りで止まれる程度の速度をキープ。ねらい通りの位置へ車体を寄せて、軽くエンジン周りに目をやってチェック...
ん?このキャブから滴り落ちる液体はなに?なかなか刺激的な香りじゃないの?
あらあらそんなに流れ出てきちゃって。危ないよ、バックファイアで引火でもしたらどうすんの?燃料止めなきゃ...
ここで慌ててタンク下に手でも突っ込もうモンなら悲惨なストーリーが幕を開けてしまう。
剥き出しのコグドベルトが俺のガラス細工のように繊細な指先を、Batesのグローブをものともせずにふっ飛ばし、同時に正確無比のデスモドロミック機構が崩壊、コスワース製ハイコンプ ピストンがバルブをドツイてエンジンが止まる仕掛け...この世で一番恐ろしいブービートラップだと思ってもらって間違い無い。
キル スイッチで素早くエンジン停止。負圧が落ちて止まるか?甘ぁい!タンクキャップ開けてみたらどんどんレベルが下がってい行く。駄目ダコレハ、コック閉メルシカナイ。
諦めてタンク下奥深くにある第2燃料コックに手をやり廻してみる。流石に5年以上触ってないと回らない...普段は燃料ゲージ代わりに手前の第1燃料コックを操作するだけだったもんな...
もう1回かけてみっか。チョットゴミでも詰ってるだけかも知れないし...ぅヒョ
ドン、ヒョドン、ヒョドン−−−ドドッ(来たぁっ!)、バタバタバタバタバタバタ、ストン−−−。
ありゃ片肺だ。仕方ねぇ、とりあえずこれで引き返そう。今日の予定はぜ〜んぶキャンセル。
FXDXで騒音撒き散らしながら帰ったる!!...
かくして翌朝、赤い弾丸の燃料タンクはスッカラカンになったのでした。
仕事を終えて、派手な社名入りデリバンに不相応なくらいコンパクトなマシンをたった1台載せて、ライダーの夜のオアシス、ラサへ。ラサは、某チームのカントクが
「もうこのピットで赤い郵便バイクなんて金輪際見たくねぇ!」
と吐き捨てたその日から、我が愛車の面倒を見てくれている優しいお店である。ただ、そこはレース屋。
同じ系統の人らしく、必ず手伝わされてお客のフリはデキナイ。ま、その方が作業速くて良いんだけどね。
例によって手を油まみれにしながらFCRをバラす。
作業開始5分。「ホラこれだ!」フロートのバルブに貼り付いた不思議な物体...
「???」...なんだろう?最初は剥がれた塗装の欠片に見えた。でもなんか紐状のものが付いている。
???金属っぽくないなぁ...ハナクソかぁ?
なんて冗談言いながら、半径コンマ5ミリ程度の不思議な物体を見つめる2人...
「解った!」、「何さ?」、「タンポポ」、「えっ?」、「タンポポの種だよ、これ!」
ガソリンで洗われて薄茶色に変色した核から白い繊維状のヒゲが伸びている。
う〜ん、まさしく大自然の脅威...俺のバイクのタンクの中に花壇を造ろうと試みる輩が居たとは...
んなわきゃナイって...
かくして我が古女房は元気を取り戻し...
ぅドヒョン、ドヒョン、ドヒョン−−−裏ビートから入るところが実はファンキーな俺っぽくて気に入ってたりするんだけど、圧縮が高いからここで3秒ほど止まるが、スタータボタンから指を離してはいけない...ドドッ(来たぁっ!)、ドドドドド
ガァオガァオガーオォドドドドドドドドドドド駐車場いっぱいに咆哮がこだまし、さらには「ガァオ」に合わせて「ヒュルルルル、ヒュルルルル」とFCRレーシングキャブレタK&N毒キノコ仕様の吸気音に、カカカカカカカカカカカカカカカカカ(精度が悪い上にオープンカバーの乾式クラッチ ノイズ).....