マッツーの福島ツーリング  前編  2002/09/15
(Mazyoraによるツッコミ付き)

カーテンを開ける。カーテンレールが擦れる音が目覚まし時計を止めて静かになった部屋に響く。
暗い部屋で瞳孔が開いた目に突き刺さる光。一瞬、淡い期待が現実になったかと心躍りかけるが、目が慣れてくると、それが早合点だったことに気付く。
どんよりと広がる雲が陰気な顔で挨拶してきた。やっぱり今にも降り出しそうな曇り空だ。ため息を一つ二つ吐き出して、身支度を整え部屋を出る。
駐輪場から玉虫色のでかいケツしたバイクを引っ張り出す。今回の旅の相棒はMazyora氏から借りたスポーツスターだ。
当初はハスクバーナで行こうとか、いやいやショベルにしようとか悩んでいたが、Mazyora氏のご好意に甘えて楽なバイクを貸していただくことにした。
でも私は自分の運転にあまり自信を持っていないので、他人のバイクに乗るのは血圧が上がって普段より鼓動が早くなる。要するにドキドキする。
よろしくな、と塗った当初に比べるとやや色あせてきた玉虫色のタンク(大きなお世話だヨ)をなで、出発。集合場所に行く前に給油する。GSのおじさんが「格好いいバイクだねぇ」と話し掛けてきた。確かビューエルで来た時は「変わったバイクだねぇ」だった。微妙な気分になる。やはりスポーツスターのスタイリングは万人に訴えかけるものがあるのだろうか。(ここはこれでヨシ)

集合場所――ユニクロ跡地――に着くと誰もいない。時刻は6時だから当り前か。待ち合わせ時間より30分も早い。(君の家から5分の集合場所に30分前に到着するっていうのはどういうこと?)
しょうがないので、ボーっとする。こういう時タバコを吸えるといいのになぁと思う。朝も早いのに国道15号は結構車も人も通る。特に多いのが犬の散歩をしてる人。彼らはちらちらと玉虫色のバイクを見ている。Mazyoraか?。やはりこのカラーリングは目立つ。私はちょっと恥ずかしいと思うのだが、氏は平気なのだろう。
そうこうしてるうちにエンドウ氏、ヒラハラ氏が到着。エンドウ氏は髪がオーリンズカラーになっていた。知らない人はおそらく目を合わせないように努力するだろう…いい人なんだけど。また、氏は磨きの達人としても有名でツーリングの次の日は必ず磨き休暇を取る。
――綿棒の魔――
いつもバイクの術師ことチョウナン氏と「磨き」を競っている。(今回不参加)
ヒラハラ氏は相変わらず「なごみ系のキャラ」を維持していた。彼は大型免許を取得し、VFR800という高性能バイクを買っている。彼と高性能バイクの取り合わせは…何というかとても斬新だ。
アオヤマ氏が最後に到着。といっても約束の15分前だが。アオヤマ氏とエンドウ氏は二人とも体格が良い。さらにヘアスタイルがオーリンズカラーとスキンヘッド…二人が並んで立っていると普通の人は近寄らないよう努力するだろう。
お二人とも(今は?)温厚な方なんですが。
集合時間の10分前だが、皆揃ったし、アオヤマ氏はせっかちでおまけにじっとしてると大便がしたくなるという奇癖の持ち主なので、さっさと出発することになった。
サイトウ(弟)氏との待ち合わせ場所――羽田ホンダ前――に到着。すでに弟氏は来ていた。後はもう1人、納車後初のロングツーリングへ赴くビルカワ氏だ。前回のツーリングで寝坊するという失態を犯してしまったビルカワ氏は今日も遅い。堪りかねたサイトウ(弟)氏が実家へ電話する。電話対応がメインの仕事をしている彼は完璧なビジネストークを駆使し、ビルカワ氏の母親から彼が既に家を出たという情報を入手した。とりあえず寝坊という事態ではないことが確認されたので、店のバイクを眺めてGSか買ってくれないかなぁとか夢を見つつ待つこと数分、ビルカワ氏が到着。彼はGパンにトレーナーというその辺の街乗り仕様で、皆が一様にそれでは凍えるのではないかと心配したが、本人は「暖かくすると眠くなるから」と平気そうだ。
ここで集まる全員が揃ったところで出発。今日三つ目の集合場所にして本当の集合場所――今までがウソの集合場所みたいだが――である東北自動車道蓮田SAへ。そこへ行くには何回走っても覚えきれない、私にとっては"魔の首都高"を使うのだが、達人アオヤマ氏が先導なので安心かつ楽チンだ。皆無事に蓮田へ到着。

蓮田に全員揃ったところで(今回の参加者は18人…出発時は)マスターオブテクノロジーことウメシマ氏が次の休憩地を皆に伝え、各自バラバラで出発。
一国のツーリングは高速はバラバラで走るものと認識されている。飛ばす人もゆっくり行く人も自分のペースで走れる素晴らしいシステムだが、血気にはやる若い面子が徐々に増えてきたのでこのシステムは改革が必要かもしれない。タマル氏曰く、昔は誰かが出先で入院していたそうだが…
私は借り物のバイクだし、ゆっくり行こうと考えていたのだが、目の前で1×0km以上で走る車をさらに速いスピードですり抜けつつ走り去る一国三銃士(アオヤマ氏、タマル氏、Mazyora氏)を見ていたらついつい右の肘が下がる。おまけにまだ二人乗りが出来ないサイトウ(弟)氏までいる。
これは行かねばなるまいと気合を入れ、しばらくついて行く。と、その時、斬新な組み合わせのライダーとバイクが私の右をすり抜けていった。ヒラハラ氏のVFRだ。性能にモノを言わせてあっという間にかっ飛んでいく。――だが――走りがぎこちない。三銃士のように流れる小枝のようではなく、風に舞う木の葉のように予測がしにくい走りだ。(最高の表現だネ)
この野郎と何となくムカついて(ごめんね)、ついて行こうとしたが、ややすり抜けに手間取っているうちに距離が離れてしまった。追撃をあきらめ、後ろを走っていたマシンガン"ミヤジマ氏に道を譲りノンビリ"行くことにする。それでも法廷速度+数十キロと、ゆっくり行く人の中間ぐらいなので、ツーリングに行くと高速道路では一人ぼっちになってしまう。
今日もそうだ。自他ともに認める方向音痴かつ忘れっぽい私は(これを書いてる時点で休憩地の名前を忘れているし)次の休憩地を頭の中で繰り返しつつ進む。で、無事到着。休憩する前に給油する。GSの兄ちゃんが「ハーレー格好良いですね」と言ってきた。
再び微妙な気分。人のものだから「そうだろ〜?」なんて言えないし言う気もない。口の中でモゴモゴと「どうも」というに止めた。
やはり時代はスポーツスターなのか?
休憩中、タマル氏にヒラハラ氏のことを聞いたら、走りが危ないと怒ったそうだ。いい人だなぁと思う。確かに高速で事故ったら宝くじが外れる位の確率で無事ではすまないだろうから怒りたくもなるだろう。

20分程休憩し、出発。10キロほど先の出口で高速を降り、一般道を走行する。さすがにここでは隊列を組んで走るが、アオヤマ氏は容赦なくすり抜けしていき、後続もすり抜けする。信号に引っかかると、歩道と対向車線を使い先頭まで抜け出る。おそらく反対の信号からは停まった車の両サイドからワラワラとどデカイバイクが湧き出てくる奇妙な光景が見えるだろう。両側を取り囲まれた車はさぞ恐ろしいだろうなと想像しつつ私も取り囲む輪の一員に加わる。
車の多い道を過ぎ、ツーリングマスターであるアオヤマ氏お得意の誰も知らない山道に進入。
参加者のほとんどがビックツインであるにもかかわらず、こういう細くて曲がりくねった道を選ぶアオヤマ氏は素敵だ。やっぱりバイクはコーナリングが楽しいのだから。
だが、あいにく路面は濡れている上に枯葉も散らばっていて、自分のバイクではない私は慎重に走ることにした。
が、やはり先頭が見えなくなってしまうのは寂しい。ちょっとだけ、ちょっとだけと思いつつ前を走る人をコーナーの突っ込みでかわし――ブレーキが新品で、アタリをつけてって言われてたし――追いかけることにする…が、すぐさまその行動を中止した。黒く濡れ光り凹凸があり、土と枯葉のドレスをまとったスレンダーな道路は私には荷が重い。
しょうがないからアタリを出すため、後続がいないことを確認しつつ、カーブのだいぶ手前で強くブレーキングしたりしてノンビリ走ることにした。
スレンダーな道路の終わりで皆で休憩。アオヤマ氏はこの道は失敗だったとぼやいている。
昔は皆で走る前に下見してたのに、とウメシマ氏が突っ込みを入れていた。磨きの達人エンドウ氏は泥がはねたバイクを見て何となく悲しそうだ。
今から磨くプランを練っているのかもしれない。
一国HP用?に一人一人の写真を撮ることになり、順番に撮影。私は最後になったが、この時借りたバイクの異変が発覚。マフラー固定用のスプリングがなくなっている。マフラーが落っこちたりはしないだろうと思われるが、ウメシマ氏が「クラックが怖いから」と針金(緑色)で代用補強。
補強中、Mazyora氏が買取とか弁償とか言われていたが聞き流すことにする。最初から無かったんですよ…多分。そうだと良いな。
で、出発。しばらく走り、食事を取るために再度休憩。ツーリングマップルにはここの手打ち蕎麦は絶品と書いてあった店で昼食。夜の宴会のために控えめにしたが、元来私はおなかいっぱい食べる習慣があるので、物足りなくてしょうがない。蕎麦屋の向かいにある会津ラーメン屋がやたらとまぶしく見えたが、自制心を働かせ踏みとどまった。

昼食後、そのまま宿に行くと早すぎるということで、観光名所に立ち寄ることに。そこは「塔のへつり」という場所で、水で侵食された奇妙でなにやら荘厳な地形を持つ川?で、それなりに観光客がいた。ここでは…と言うかいつもだがミヤジマ氏は妙にテンションが高く、危険な場所でポーズを決めて写真を撮られていたりした(私も対抗したが)。ここでは結構長い時間休憩し出発。
何だが後続がついてこない。聞くと、ヒラハラ氏がウメシマ氏がか落とすのを見たと言い張り、それを探していたそうな。だがこれは何かを落としたのを見たのではなく、ヒラハラ氏自身のツキが落ちていくのを見たということを後に知ることになる…( ^ 0 ^ )/~~~~
誰も何も落としていないことが分り、いざ出発…しようとしてまたストップ。オニイサン氏(本名不明…スイマセン)のセルが回らないトラブルが発生。マスターオブテクノロジーの腕の見せ所とウメシマ氏が修理にかかるが、フロントハンドルをこじるとあっさり始動。どうやらフロント周りの配線の接触が悪いらしい。ちゃんとした修理は宿ですることにして、とりあえず出発することになった。

そしてその後は、眠気と闘いながらの走行になった。おまけに橋の工事とかで凄い渋滞。トロトロとすり抜けしていると意識もトロトロとしてくる。遠くなりそうな意識の中、沿道に落ちた栗を見て、踏むとパンクするのかなぁと妄想してると目の前に栗の看板が突然出現。慌ててよける。だが、おかげで目が覚めた。気分もすっきりしたしガツンと走る…事は出来ずトロトロとすり抜けし、ようやく渋滞の先頭く。
――交互通行用の信号――に辿り着すると、後の方から凄い勢いで近づくバイクが。ビルカワ氏だ。ガードレールの内側を結構な勢いで走ってきた。
おぉ、飛ばしてるなぁと思った瞬間、フロントをロックさせてしまい、いきなり転倒してしまった。そこにいる全員が彼のバイクにかかっているカスタム費用――サイドカーが買えそうなスポーツスターなんて滅多にいないだろう――を思い出し、叫び声をあげる。
だが、素早く起き上がったビルカワ氏は、一言二言アオヤマ氏に何事かを告げ、それを聞いたアオヤマ氏はきびすを返して戻っていってしまった。
事態が分らない私達は、信号が青になったので先へ進み、広い駐車場があるコンビニで待機することにした。何が起こったのか、栗を踏んでパンクしたヤツがいるのではないかとか笑いながら想像してると、タマル氏の携帯に電話が。するとそれを聞いたタマル氏から笑顔が消えてしまった。電話を切ったタマル氏は私達に向き直り、衝撃の一言を放った。
「ヒラハラが崖から落ちた」


後編へ続く。