あまりにも色々な人に同じ事を聞かれたり、憶測で色々なことを言われる(誉められ
すぎ、カッコ良く書かれすぎ)ので、ここでひとつ、公式にコメントをしておくべき
だと考え、筆を執ります。

あの時私に何が起こっていたか、2日ほど日を置いて、冷静になったことと、壊れた
マシンを色々見て解ったことも含めて、ご説明をしておきたいと思います。暇つぶし
のつもりで読んでください。

<予選>
ピットを出る時から既にかなりの違和感を感じていました。まず、フロントブレーキ
の感覚が全く違っていたこと。最初の1周は、アタリがとれていなくてほとんど効き
ませんでした。当然予測はしていましたが、いつもより計測時間が短いことが頭を過
ぎり、正直言って結構焦りました。先行する奥川選手に引っ張ってもらおうと思って
いたのですが、1周目のウォームアップから既について行けませんでした。2周目以
降は、なんとかいつものタイミングでブレーキング出来るようになったのですが、今
度は効きの良くなったブレーキの感覚が解らず、リズムに乗れません。計測が始まっ
てからも、前を走る中村選手とのギャップさえ詰められない状態で、ピットサインを
見ないまでも、明らかにタイムが出ていないことが分かっていました。結果はご存知
の通り。惨澹たるものでしたが、本当は本人的にはあまり気にしていませんでした。
嘘〜!と思われる方が殆どでしょうが、確かに少しは焦りましたが、マシンのセッ
ティングをあれこれ直しながら、少しづつ冷静さを取戻しながら考えていたことは、
「前にアメリカから帰って来た翌日に走らなければならなかったことや、レース前に
1度も走れなかった時のことを思い出せば今回の方が条件的には遥かに恵まれている
し、どうせレースになれば放っておいてもタイムは出るだろう、ぶっつけ本番予選に
は慣れっこな筈だゼ!」くらいなものでした。
オマケに少ない出走台数に救われて、グリッドは末席ながらも2列目をキープ。
逆に、色々な関係者に「どうしちゃったの?」とか聞かれるうちに、「そうか、皆俺
がもっと速いことは解ってるんだ。大したモンだゼ!」なんて図々しくも思っていた
くらいです。「スタートでミスをしなければ...、1コーナーに確実に3位で入ろ
う、そうすれば絶対に3位で終われる。」これが本当の作戦でした。
サスペンションのセッティングを豊田選手に手伝ってもらって(感謝)、「行け
る!」=「いつものタイムかそれ以上出せる」、本気で信じてました。

<決勝>
誤算その1・・・スタート
みんなは「ロケットスタートを決めてた」って言ってますが、実は自分では失敗だっ
たと思ってます。1コーナーの進入時、他のライダーを牽制しながらインに突っ込ん
だまでは良かったのですが、ブレーキを我慢したのがちょっと長すぎて、向きを変え
るのに一瞬だけ手間取って、結果外から来た中村選手に先を譲りました。彼に引っ掛
かって、2位のライダーについて行くチャンスを逃したのがそもそもの始まりです。
2位スタートの岩切選手の予選タイムは1分11秒台後半でしたから、3番時計の貝
原選手同様、慣れないセッティングのマシンで標的にするのには丁度良いと思ってい
ました。だから、何がなんでも3位で1コーナーを抜けたかったのです。ところが中
村選手を第2ヘアピンの手前で捕らえる頃には、既にストレート半分以上の差を開け
られて居り、結果これを取り返すのに焦ったと言うか、熱くなったと言うか...

誤算その2・・・2度目の3位浮上
ブレーキのタイミングが掴めずに減速しすぎて居るところを、確か3周目の1コー
ナーでインから差して来たのが予選3位の貝原選手でした。この時も抜かれたこと自
体には、結構冷静に対処していました。「こいつについて行けばペースを取り戻せる
に違いない。ラッキー!」そう考えてピッタリ後ろをマークしました。第1ヘアピン
で後ろに張り付いて、とにかく離されない事だけに集中していたその時、恐らく後ろ
をつつかれてるプレッシャーからか、開けすぎた貝原選手のリアタイヤが多きくスラ
イドし、ハイサイド...ここで私はまた大事なペースメーカーを失ってしまったの
です。

焦り、そして転倒
結果労せずして3位のポジションを得て、最終コーナーを立ち上がってサインボード
に目をやると、タイムは「案の定」13秒でした。「タイムが伸びないナ...」。
焦りを感じ、1コーナーに進入する岩切選手の背中を見て一瞬にして熱くなった私
は、2周目の第2ヘアピンの競り合いでのタイムロスや、3周目の第1ヘアピン立ち
上がりで転倒者を避ける為に要したタイムロスの事をすっかり忘れていました。
つまり、クリアラップならばサインよりも速いタイムが出ていた筈だったということ
を。
この時実は「後ろは離して来ている筈。無理しなければ3位でフィニッシュできる」
とも考えたのですが、冷静さを失っていたもう一人の私が、「なんだ13秒?練習よ
り遅いじゃんか、こんなタイムで3位になったって、監督にイヤミ言われんのがオチ
だぜ!何がなんでもせめて11秒台出して2位で終わってやる!」...私が本当に
冷静さを失ったのは、この時でした。

今、会社の地下駐車場に保管されている、壊れたマシンの前後のショックは、目一杯
フルストロークしていました。動く方向に柔らか目に変更したリアショックのスプリ
ングが、当日の好天と路面温度でグリップを増したタイヤに負け、沈み込んでしまっ
ていた事が考えられます。タイムが伸びなかった原因の一つだと思われます。コーナ
リング中や、減速時に変な挙動は感じませんでしたので、動く方向に振ったのは正解
だったと思いますが、タイヤのポテンシャルを甘く見てました。でもそんなこと、メ
インストレートで冷静さを失っていた自分には、考える余地もありません...

ライダーには2タイプ居ると思ってます。まずはクリアラップでタイムを縮めるのが
得意な選手。一国レーシングの若旦那なんかがこの典型だと思います。もう一方は、
ドッグファイト大好きタイプ。とにかく競り合いが好きで、争いながら、或いは前と
の差を詰めて行く事でタイムを稼いで行くタイプ。私は勿論後者...頭の良いタイ
プでは無いですね...

4周目のシケインに差し掛かった時、目に飛び込んできたのは第2ヘアピンの進入の
為に減速している岩切選手の姿でした。
シケインの立ち上がりから第2ヘアピンの進入までの区間は、この日もっとも気持ち
良く乗れていた区間で、1周目で中村選手を差したのも、ここのブレーキングで競り
勝った結果でした。
「捕らえられる!」と思ったその時、前に気を取られて切返した先にあったのはイン
側の紅白のゼブラ...
「アッ!」と思った瞬間にはもうフロントをすくわれてコースに転がっていました。
凡ミス中の凡ミス。それに比べてあまりにも高くついた代償...
ヘルメットを路面に叩き付けられながら心の中は、悔しくて、情け無くて、再スター
トなんて全然考えもしませんでしたし、そんな素振りすら見せなかったと思います。
ただ、「終わった。」と...
エスケープゾーンに逃げてクラッシュパッドに身を預ける時にはもう、痛む左手と、
壊れたマシンの損傷と、また修理に金がかかる事しか考えてませんでした。

応援してくださった皆さんには、本当に申し訳ない。今、心からそう思っています。
転倒リタイヤという結果に対してではなく、「ピットで飛び跳ねながら盛上がってく
れていた仲間や、今日の為にマシンを間に合わせるのに一生懸命手伝ってくれた人達
の為にも、何がなんでも最後まで走ろう!」という気持ちを忘れた自分に腹が立って
仕方ありません、そのことについて、今更随分勝手な言い分ですが、もう一度謝りた
い。そう思っています。

本当に申し訳ありませんでした。どうか許してください。

以上が今回の偽らざる顛末です。

マシンは素晴らしい仕上がりでした。全ては己の未熟さが原因です。読んでいただけ
ればなお良くお分かりかと思います。

最後に今一度、応援に駆けつけてくださった皆さん、心配してテントに立ち寄ってく
ださった皆さん、監督始めチーム関係者の皆さん、そして一緒に競い合った選手の皆
さん、ありがとうございました。
今回の苦い経験を糧に、結果で恩返しして行きたいと思ってます。

2002年5月8日

TEAM-PLAIN

Rider 藤原 裕史